ルノーとフィアットの経営統合破談

フランス政府はルノーの筆頭株主で、ルメール経済財務相はフィアットとの経営統合に際してフランスでの雇用確保を主張していました。統合はルノーと提携関係にある日産自動車が慎重だったこともあり、破談になりました。

FCAとフランス大手ルノーの経営統合が破談になったことで、ルノーは経営戦略見直しを迫られ、企業連合を組む日産自動車との経営統合案に再び傾倒する可能性がある。日産はこれに反対しており、双方の対立が先鋭化することも予想される。 FCAが経営統合案を撤回した背景には、ルノーの筆頭株主であるフランス政府が多くの要求事項を突き付け、折り合えなかったことがある。フランス政府はFCAとルノーの統合を歓迎する一方で、国内のリストラをしないようくぎを刺していた。政府側からの取締役受け入れも求めており、FCAは交渉してきたが、統合の成功を確信できなかったようだ。 これによって、日産や三菱自動車も含めた世界最大の自動車グループ誕生も幻に。ただ、自動運転や電気自動車(EV)といった次世代技術をにらんだ自動車業界の合従連衡の動きは今後も続きそうだ。

日産自動車、三菱自動車との三社連合の首脳会議に出席するため、仏自動車大手ルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)が二十八日、来日した。二十九日の首脳会議では、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との統合協議について日産、三菱側に説明する見通しだ。 (森本智之) スナール会長は東京・羽田空港で記者団に「首脳会議では最近の問題を議論することになる。ルノーにとって良いことは日産にとっても良いことだ」と述べた。ルノーはFCAから経営統合の提案を受けた二十七日、提案を前向きに検討すると発表している。統合が実現すれば懸案の日産や三菱自との統合問題に影響するのは必至だ。 これまで日産は、事実上の親会社であるルノーを上回る経営規模をたてに発言力を保ってきた。 だが、SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「ルノー、FCAが一緒になれば、企業連合内での日産の発言力が低下する」と指摘する。ルノーとFCAが統合すれば世界販売(昨年)は八百七十万台となり、日産の五百五十万台を上回る。収益力や時価総額などもルノー側が大きくなり、日産に対して統合の圧力をさらに強めてくる可能性がある。 日産の懸念は、これまで同様に経営の独立性を守れるかどうかだ。日産幹部の一人は「ルノーとFCAは人員削減しない、工場も閉鎖しないと言っているが、リストラは経営統合のメリットの一つ。本当にそんな虫のいい話が可能なのか。うのみにできない」と慎重な姿勢を示した。 ルノーとFCAとの統合協議は一年以上かかるとの見通しがある。それが終われば次は日産が答えを出す必要に迫られる。

欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は二十七日、フランス大手ルノーに対し、経営統合を申し入れたと発表した。両社の株主が50%ずつ株式を保有する持ち株会社をつくるのが柱だ。ルノーは同日の取締役会で前向きに検討していくことを決めた。 統合が実現すれば、ルノーと企業連合を組む日産自動車や三菱自動車を合わせた販売台数は、ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)を抜き、世界首位となる巨大グループが誕生する。日産はルノーとFCAの話し合いに参加していない。日産の西川広人(さいかわひろと)社長は二十七日夜、両社の交渉について「よく見なければいけない」と記者団に語った。 日産幹部は、二十九日に横浜市で開く予定の日産・ルノー連合の会合で、ルノー側から説明があるとの見通しを示した。 電気自動車(EV)や自動運転といった次世代技術の開発には巨額の資金が必要だ。FCAの提案には、両社の人材や技術などの経営資源を持ち寄り開発を加速する狙いがある。規模拡大で存在感を増し、IT大手との提携を進めやすくする思惑もありそうだ。 提案では、両社の持ち株会社はオランダに置く。取締役会は十一人で構成し、日産からも一人指名する。車台共有化など効率化を追求し年間五十億ユーロ(約六千百億円)超の相乗効果を目指す。フランスのヌディアイ政府報道官は二十七日、提案に「政府は賛成だ」と述べた。 ルノーはFCAが強みを持つ北米に足場をつくりたい考えだ。 ルノーは日産にも統合を提案しているが、拒否されている。FCAとの統合計画が、業績面で企業連合を支える日産への圧力になるとの見方もある。

世界の新車市場はけん引する米中二大国の販売台数が頭打ちとなり、次世代車の開発競争も激しくなっている。こうした環境下で欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とフランス大手ルノーの提携交渉は自動車業界の再編を本格化させる起爆剤になる可能性もある。ルノーと連合を組む日産自動車もその渦に巻き込まれかねない。 ▽貿易摩擦 世界最大の新車市場、中国では二〇一八年の販売台数が前年比2・8%減の二千八百八万台。中国メディアによると、前年割れは二十八年ぶり。互いに追加関税をかけ合う米中貿易摩擦の影響で景気減速が深刻となっており、中国政府は購買力の低下に危機感を抱く。 一八年の米新車販売は前年比0・6%増の千七百三十三万台だったが、過去最高を記録した一六年には及ばない。貿易摩擦の長期化で新車価格が上昇し、車社会でも買い控え懸念が強まっている。 ▽巨大企業 「自動車版エアバスの創出を目指す」。フランス紙レゼコーは、欧州の巨大航空機企業を引き合いに、FCAとルノーの提携交渉の狙いをこう解説した。 航空機市場は米ボーイングとエアバスがほぼ二分している。自動運転や通信機能を備えたコネクテッドカー(つながる車)といった新たな技術の開発では、日本やドイツを含む各国メーカーが激しい競争を繰り広げる。 グーグルなど米IT企業も加わり、投資効率を高めるための業界再編は必然ともいえる。 ▽統合圧力 一九九九年に発足したルノー日産連合では、両社が共に部品調達コストの削減や事業規模の拡大につなげ、業界内では「最大の成功例」とも評されてきた。日産前会長のカルロス・ゴーン被告は連合のトップとして、経営統合を画策していたとされる。 ルノーは四月にも日産に経営統合を再提案。日産は改めて否定的な考えを示した。 ただ、ルノーFCA統合が実現すれば、事業規模で日産を大きく上回り、約四割の日産株を握るルノーに対する日産側の発言力は低下しかねない。ルノーが統合圧力を強める可能性もあり、日産は経営上の重荷を背負うことになりそうだ。 

フランス自動車大手ルノーと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が二十七日にも、経営統合を視野に入れた提携交渉について発表する。複数の欧米メディアが報じた。統合が実現すれば、世界販売台数首位の巨大グループが生まれることになる。 関係者によると、ルノーは二十七日朝に取締役会を開催。FCAとの提携に関し協議するもようだ。ルノーと企業連合を組む日産自動車は話し合いに参加していないという。 自動車各社は電気自動車(EV)や自動運転といった次世代技術の開発に力を入れており、競争が激化する中、投資負担軽減といった目的がありそうだ。 FCA、ルノーと、日産や三菱自動車を合わせた二〇一八年の世界販売台数は約千五百六十万台。ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)の同年の販売台数約千八十三万台を大きく上回っている。 ルノーは日産に対しても統合を提案。FCAとの統合で規模を拡大すれば、業績面で企業連合を支えてきた日産への圧力になるとの見方もある。二十九日には企業連合の新会議体の第二回会合が日本で開かれる予定で、議題となる可能性がある。 FCAを巡ってはフランス大手グループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)と連携を探る動きも取り沙汰されていた。日産関係者は「成り行きを注視するしかない」と当面は静観する構えだ。ルノーにとってはFCAが強みを持つ北米市場に足場をつくりたいとの思惑もありそうだ。<ルノー> 19世紀末創業のフランス自動車大手。ルノーによれば、1945年に国有化されたが96年に完全民営化した。99年に日産自動車が経営危機に陥り、ルノーが出資して企業連合を結成。2016年には三菱自動車も企業連合に加わり、調達や開発の共通化を進めている。17年に3社の世界販売が初めて1000万台を突破し、トヨタ自動車を抜いて2位に浮上。18年は1075万台超と過去最高を記録し、2位を守った。 (共同)<フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)> 自動車大手のイタリア・フィアットと米クライスラーをルーツとした企業。フィアットがクライスラーを2014年に完全子会社化した。18年の売上高は1154億1000万ユーロ(約14兆円)で、世界販売台数は約484万台。高級車のマセラティ、アルファロメオのほか、スポーツタイプ多目的車(SUV)「ジープ」なども抱える。

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